大阪高等裁判所 平成元年(ネ)2318号 判決 1991年10月11日
控訴人
和田弘子
右訴訟代理人弁護士
國本敏子
同
谷智恵子
同
大野町子
同
氏家都子
同
高瀬久美子
同
養父知美
被控訴人
日本国有鉄道清算事業団
右代表者理事長
石月昭二
右訴訟代理人弁護士
高野裕士
右訴訟代理人
北村輝雄
同
福田一身
同
橋本公夫
同
三国多喜男
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 控訴人が被控訴人に対し労働契約上の従業員たる地位を有することを確認する。
3 被控訴人は控訴人に対し、六〇万六〇〇〇円並びに昭和五九年二月から毎月二〇日限り一五万一五〇〇円及びこれに対する各支払期日の翌日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
5 3項につき仮執行の宣言
二 被控訴人
1 主文と同旨の判決
2 担保を条件とする仮執行の免脱宣言
第二当事者の主張
一 原判決の加除訂正
当事者双方の主張は、次のように加除・訂正するほか原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決三枚目表一行目「局に」(本誌五五一号<以下同じ>13頁2段20行目)の次に「事務補助職臨時雇用員として」を、同行目「以下」の次に「、控訴人と大阪工事局との間の雇用契約を」を加える。
2 同四枚目裏七行目「受けない。」(13頁4段14行目)の次に「また、右職務内容は、国鉄当局が臨時雇用員の定義(『国鉄の勤務制度その解釈と運用』(証拠略))のなかで示している『季節や時間帯によって発生する臨時的業務』に当たらない。」を加える。
3 同五枚目表九行目「保障され、」(14頁1段1行目)と「昭和五一年からは」(14頁1段1行目)の間に「昭和三六年からは社会保険、労働保険の適用、」を挿入する。
4 同五枚目裏四行目末尾(14頁1段9行目)の次に、「本件契約が期限の定めある雇用契約であるならば、控訴人らに対し期間満了による退職扱いにすればよいところ、国鉄当局は、解雇の手続をとり、国家公務員等退職票(証拠略)に退職事由として『業務量減少による解雇』と記載し、控訴人に解雇予告書(証拠略)を交付し、解雇予告手当金を供託した(証拠略)、また、臨時雇用員就業規則には、臨時雇用員に対する解雇の定めがある。これらの事実に照らしても、本件契約は期限の定めのない雇用員契約であることが明らかである。」を加える。
5 同七枚目裏九行目(14頁3段15行目)の次に改行して、「国鉄当局において本件解雇が決定されたのは、国鉄の昭和五八年度予算案作成時であり、これが国鉄当局にとって動かしがたいものとなったのは同年八月であった。当時は、昭和五六年五月二一日国鉄当局が政府の指示のもとに作成した国鉄の経営改善計画に基づき、国鉄の再建、経営改善のための諸施策が実施中であった。右計画においては、雇用調整の問題につき退職者不補充による自然減で要員縮減を達成するとされ、本件解雇当時は計画を上回ってその成果を挙げていた。昭和五七年九月二四日政府が臨調答申を受けて閣議決定した『日本国有鉄道の事業の再建を図る為に当面緊急に講ずべき政策について』のなかでも、要員の削減については職員の新規採用の原則停止の措置を打ち出しているにとどまる。そして、昭和五七年度において例外的ではあるが、臨時雇用員を含め職員の新規採用が行われた。さらに、昭和五八年八月二日の国鉄再建監理委員会第一次緊急提言においても、要員の削減については、新規採用の原則停止の継続、配置転換の促進によるものとされている。以上のように、本件解雇が決定された当時、さらに本件解雇当時も、国鉄における要員の削減は退職者不補充による自然減によって達成すべきものとされていたのであり、職員を解雇することはおよそ考えられていなかった。」を加え、続いて改行して
「エ 臨時雇用員制度は、国鉄が分割民営化された後も、被控訴人において控訴人が勤務していた当時とほぼ同様の形態で存続し、現に近畿資産管理部には、四名の臨時雇用員が採用され、控訴人と同様、技術職中心の職場のなかで恒常的・不可欠な庶務専門の事務をしている。このことからも、本件解雇の必要性はまったくなかったことが明らかである。」と加える。
6 同七枚目裏末行目「先立ち、」(14頁3段18行目)の次に「削減すべき余剰人員を確定する作業をまったくせず、」を加え、同八枚目表二行目末尾(14頁3段20行目)の次に「また、国鉄当局が控訴人に対してした再就職斡旋は、不誠実極まりないものであった。」を加える。
7 同八枚目裏六行目「労働組合との」(14頁4段9行目)の次に「説明。」を加え、九枚目表二行目「相談調整」(14頁4段19行目)を「説明・協議」と訂正し、同四行目「解雇理由」(14頁4段21行目)の次に「、臨時雇用員の退職手当」を加える。
8 同末行末尾(14頁4段25行目)の次に、「右雇用安定協約は、旧日本国有鉄道法(以下「旧日鉄法」という。)を補完し、国鉄全職員の身分の安定を図るために締結されたものであり、控訴人は、旧公共企業体等労働関係法(以下「旧公労法」という。)・旧日鉄法上の職員であり、右協約が適用される。したがって、本件解雇は、『本人の意思に反する免職』にあたり、右協約に違反し無効である。」を加える。
9 同九枚目裏九行目「事実のうち、」(15頁1段13行目)の次に「昭和四七年三月九日」を加える。
10 同一〇枚目裏九行目「きたこと」(15頁2段14行目)の次に「、国鉄当局が控訴人の国家公務員等退職票に控訴人主張のとおり記載し、控訴人に解雇予告書を交付し、解雇予告手当金を供託したこと、臨時雇用員就業規則に臨時雇用員に対する解雇の定めがあること」を加える。
11 同一一枚目表六行目「の事実」(15頁2段26行目)の次に「のうちア、イ」を加え、同七行目末尾(15頁2段26行目)の次に「ウ、エのうち、本件雇止め当時、昭和五六年五月二一日国鉄が経営改善計画を作成・提出したこと、昭和五七年九月二四日政府が臨調答申を受けて閣議決定した『日本国有鉄道の事業の再建を図る為に当面緊急に講ずべき政策について』のなかで、要員の削減について職員の新規採用の原則停止の措置を打ち出していること。昭和五八年八月二日の国鉄再建監理委員会第一次緊急提言において、要員の削減については新規採用の原則停止の継続、配置転換の促進を提言していること、被控訴人近畿資産管理部において四名の臨時雇用員が採用されていることは認めるが、その余は否認する。」を加える。
12 同一二枚目裏八行目「本件雇止め」(15頁4段13行目)を「臨時雇用員」と訂正する。
二 当審における控訴人の追加主張(本件解雇の無効事由)
1 旧日鉄法二九条違反
本件契約は期間の定めのない雇用契約であるから、控訴人は同法二六条に定める同法上の職員であるところ、同法二九条は、職員は、業務量の減少その他経営上やむを得ない事由が生じた場合等同条に定める一定の事由がない限り、その意に反して降職され、又は免職されない旨定めている。本件解雇当時、右免職等の事由は存在していなかったから、本件解雇は、同条に違反し無効である。控訴人ら臨時雇用員も旧公労法上の職員(同法二条一項一号、二項一号)であり、争議行為禁止等の労働基本権の制限を受けている。旧日鉄法二九条の身分保障規定は、国鉄職員が旧公労法により右労働基本権の制限を受けることの代償措置として定められたものである。したがって、旧公労法上の職員である控訴人ら臨時雇用員が国鉄職員として旧日鉄法の身分保障規定の適用を受けるのは当然である。
2 性による差別
(一) 国鉄は、昭和二四年女性職員を大量解雇して以来、原則として女性は、電話掛、バス車掌、医療関係の専門職に限定して職員として採用し、それ以外は、昭和五三年度からの三年間を除き、男女雇用機会均等法が施行されるまで正規の職員として採用せず、臨時雇用員(事務補助職)としてしか採用しなかった(右の三年間は、国際婦人年における女性差別撤廃の世論の高まりに呼応し、例外的に採用したものである。)。しかも、事務補助職の女性は、各職場において一般事務職員としての恒常的で事業運営に不可欠な業務に従事しながら職員化の機会も与えられず、臨時という不安定な雇用形態におかれたまま正規職員と大幅な格差のある低賃金と劣悪な労働条件のもとで長期にわたり継続勤務させられた。そして、国鉄当局の雇用政策の結果、逐年女性の正規職員が減少する一方、女性の臨時雇用員は著しく増加して各職場に常態的に存在するようになり、かつ、その勤続年数は終身雇用といえるほど長期化することになった。
(二) こうした状況のもとで、臨時雇用員の職員化の要求が起こり、昭和四一年国鉄労使間で、「臨時雇用員の使用に関する了解事項」として「著しく波動のある業務又は臨時に必要のある場合を除いては、段階的に解消する」(正職員化する)ようにする。臨時雇用員が職員採用試験を希望するときは、受験の機会を与えるようにする。」旨の協定(議事録確認)が交された。しかし、その後、大阪工事局において職員化された臨時雇用員(四名)はすべて男性であり、女性は、多くの職員化を希望する臨時雇用員がおりながら、国鉄当局が右協定を履行せず職員化されなかった。
(三) 以上のような国鉄の雇用管理は、いわゆる「男女別コース制雇用管理」にほかならない。本件の臨時雇用員の一律解雇は、この男女コース制雇用管理の結果として、実質的には女性を対象とした整理解雇である。したがって、本件解雇は、性による差別であり、男女雇用機会均等法七条、憲法一四条、民法九〇条に違反し無効である。
3 解雇権の濫用
(一) 国鉄は、合理的な理由がないのに、雇用を制限し労働者の身分保障を図る労働基準法、旧日鉄法の各規定、判例法理を潜脱し、かつ、労働条件を低く抑える不法な意図のもとに女性を雇用期間を二か月とする名目上の臨時雇用員としてしか採用せず、かつ、控訴人らを実態に反した臨時雇用員として正規職員と比較して給料・一時金・諸手当、年休等において劣悪な労働条件のもとに雇用し続けた。
(二) 加えて、国鉄は、控訴人に対し以下のような違法不当な不利益扱いをしている。(1)国鉄は、控訴人ら臨時雇用員も国家公務員退職手当法上の職員であり同法の適用があるのに、同法に違反した「臨時雇用員の退職手当について(事務連絡)」と称する内部通達を発し、本来支払われるべき金額の半額にも満たない退職金しか支払わなかった。すなわち、<1>退職金算定の基礎となる勤続期間について、産休期間を退職扱いとして勤続期間に含めず、<2>退職金算定の基礎となる俸給額について、右退職扱いにした当時の低い金額とし、かつ、通勤手当以外の手当を支給していなかったのに日額賃金の二割を手当分として控除し、<3>整理解雇であるのに自己都合退職として低い乗率を適用し、この結果、控訴人は、本来一三四万〇三二五円の退職金の支払を受けるべきところ、五〇万九八二〇円の支払を受けたに過ぎなかった。(2)国鉄は、控訴人らに支払われた右退職金が雇用保険法に定める失業給付金にも満たないものであり、同法の適用除外に該当しないにもかかわらず、臨時雇用員については右適用除外として雇用保険に加入せず、そのため控訴人は雇用保険からの給付を受けることもできなかった。(3)国鉄は、退職手当の決定。計算及び支払方法について就業規則を作成して行政官庁に届出るべき義務(労働基準法八九条)を怠っている。(4)国鉄は、昭和四八年九月長男出産に際し控訴人を解雇したが、違法解雇を隠ぺいするため控訴人に退職願いの提出を強要し、同五二年五月次男出産の際にも控訴人を退職扱いにした。これは、産前・産後休暇を保障しその期間中の解雇を禁止した労働基準法六五条、一九条に違反している。
(三) 以上のように、国鉄が、採用形態、採用条件、労働条件等で差別扱いをし、その違いを理由に、正規職員に先立ち控訴人ら臨時雇用員に対し解雇を強行することは、解雇権の濫用であり無効である。
三 当審における控訴人の主張に対する被控訴人の認否
1 旧日鉄法二九条は、二か月以内の期間を定めて雇用される者以外の者に適用されるものであるから、控訴人ら臨時雇用員には適用がない。
2 本件雇止めが性による差別である旨の主張についてはすべて争う。
3 解雇権濫用の主張はすべて争う。控訴人は昭和四八年九月自己都合により任意退職したのであり、同五二年五月次男出産の際に控訴人を退職扱いにしたことはない。
第三証拠
本件記録中の原審及び当審の証拠目録記載のとおりであるから、これを引用する(略)。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本訴各請求は理由がなく、これを棄却すべきものと考えるが、その理由は、以下のとおり付加・訂正・削除、判断するほか原判決理由説示と同一であるのでこれを引用する。
1 原判決理由の付加・訂正
(一) 原判決一九枚目表五行目「甲第一号証の1」(17頁2段17行目(証拠略))の次に「、三」を加える。
(二) 同枚目裏四行目「甲」(17頁2段29行目(証拠略))の次に「第四、」を、同五行目「一ないし八、」(17頁2段29行目(証拠略))の次に「第八二、第八四号証」、同九行目「第五」(17頁2段29行目(証拠略))の次に「、第六」をそれぞれ加え、同一一行目「原告」(17頁2段29行目)を「原審及び当審における控訴人」と訂正する。
(三) 同二〇枚目表五行目「雑役業務」(17頁3段5行目)の次に「等」を、同行目「昭和五八年」(17頁3段6行目)の次に「六月当時」を加え、同六行目「九〇」(17頁3段8行目)を「八七」に訂正する。
(四) 同枚目裏一一行目「臨時雇用員は」(17頁3段29行目)の次に「実際上」を加える。
(五) 同二一枚目表四行目「昇級した」(17頁4段3~4行目)を「昇級する」と、同七行目「割増賃金」(17頁4段8行目)を「超過勤務手当」とそれぞれ訂正する。
(六) 同二二枚目裏三行目末尾(18頁1段17行目)の次に「後者の規則には、前者のそれと異なり昇級、昇格の定めや降職、免職、懲戒の定めがなく、また、期間雇用の場合は契約期間が満了したときは臨時雇用員は退職したものとする旨の退職規定のほか、契約期間中であっても『業務量の減少その他やむを得ない事由が生じたとき』は臨時雇用員の意思に反して解雇することができる旨の解雇規定がある。」を加える。
(七) 同枚目裏五行目「経て、」(18頁1段20行目)の次に「昭和四七年三月九日」を加え、同八行目末尾(18頁1段25行目)の次に「控訴人は、同月三一日<1>契約期間は昭和四七年八月一日から同年九月三〇日まで、<2>勤務種別は日勤、<3>従事する作業の内容は事務補助、その他勤務時間、賃金額を記載した臨時雇用員雇用契約書に署名捺印して大阪工事局長に提出した。」を加える。
(八) 同二三枚目表三行目「その後」(18頁2段3行目)から同五行目(18頁2段6行目)「押印する」までを「その後、一枚の契約書に契約期間をそれぞれ二か月とする六回の契約欄を設け、控訴人は、当初第一回目の契約につき右契約書の末尾に署名捺印し、次回以降の契約について右契約欄に押印する」と改める。
(九) 同二四枚目表八行目「であって、」(18頁3段13行目)から同九行目「証拠はなく、」(18頁3段15行目)までを次のとおり改める。
「であると認めることができる。もっとも、控訴人の職務は、大阪工事局における恒常的な職務であって、必ずしも『季節や時間帯によって発生する臨時的業務』には当たらないが、右事実をもって本件契約が期間の定めのない雇用契約であるとすることはできない。また、国鉄当局が控訴人に交付した国家公務員等退職票に退職事由として『業務量減少による解雇』と記載し、控訴人に解雇予告書を交付し、解雇予告手当金を供託した事実、また、臨時雇用員就業規則に臨時雇用員に対する解雇の定めがあることは当事者間に争いがないが、これらは大阪工事局において期間満了による雇止めであっても契約期間中の解雇と同じ慎重な手続を採ったものと解せられるので、右各事実をもって本件契約が期間の定めのない雇用契約であるとすることはできない。また、前記認定にかかる控訴人採用時の大阪工事局担当者の申述をもっては期間の定めのない雇用員契約の成立を認めるに充分ではなく、他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。また、右認定の契約の」
(一〇) 同枚目裏九行目「従来の」(18頁3段31行目)の次に「契約を更新する」を加える。
(一一) 同二五枚目表三行目「前掲甲」(18頁4段7行目(証拠略))の次に「第四、」を、同五行目「第二七号証、」(18頁4段7行目(証拠略))の次に「第六八ないし第七〇号証、」をそれぞれ加え、同一〇行目から一一行目にかけ「ないし」(18頁4段7行目(証拠略))とあるのを「、」と訂正する。
(一二) 同枚目裏七行目「同五五年度」(18頁4段16行目)から一〇行目末尾(18頁4段20行目)までを「同五五年度には欠損が一兆円を超え、その後も欠損は、同五六年度一兆〇八五九億円、同五七年度一兆三七七八億円、本件雇止め時の同五八年度一兆六六〇四億円と増加の一途を辿り、繰越欠損(累積赤字)額は、同五七年度末に八兆九六四六億円、同五八年度末に一〇兆六二五〇億円に達し、また、長期債務額は、同五七年度末一八兆〇四五七億円、同五八年度末一九兆九八三三億円に達した。」と改める。
(一三) 同枚目裏一一行目「現在」(18頁4段22行目)を「当時」と、同二六枚目表二行目「義務付けた」(18頁4段24行目)を「義務付けること等を内容とする」と、同三行目「議決し、」(18頁4段25行目)を「成立させ」とそれぞれ訂正し、同五行目「同六〇年度」(18頁4段28行目)から同七行目末尾(19頁1段1行目)までを次のとおり改める。
「経営改善計画を提出した。この計画において、国鉄は、当時の国鉄の置かれた現状を『交通機関相互の激しい競争のなかにあって国鉄の地位は著しく低下し、その経営は危機的な状況にある。』と認識し、国鉄再建の基本方針として『国鉄自身の企業努力の及ぶ分野については、徹底した経営改善努力が必要であり、国鉄としては効率的な運営を目指す思い切った減量経営に取り組む』こととするとし、『この経営改善計画は、国鉄の存立にかかわるいわゆる(<後のない計画>)であり、国鉄は、その経営の全責任をかけてこの完遂を期す覚悟である。そのため経営の責任にある者はもちろん、全職員が輸送の使命と同様に本計画の達成を最大の命題として、毎日の職務の遂行に当たるよう徹底を図り、再建を確実に達成する決意である。』と宣言し、経営改善計画の具体的方策として、<1>予算人員を逐年縮減して職員数を当時の四二万四〇〇〇人から昭和六〇年度において三五万人にまで縮減すること、<2>収支の改善を達成するため一層の経費節減に努める必要があり、そのため業務運営全般についての抜本的な見直しを行うこと、<3>設備投資については極力これを圧縮することとし、計画期間中の投資規模を現状程度に抑制すること等を挙げている。なお、国鉄は、昭和五九年五月九日運輸大臣に対し、昭和六〇年度における職員数を三二万人とする旨の右計画の一部変更申請をした。」
(一四) 同二六枚目表九行目「新規採用」(19頁1段3行目)から同一〇行目「提出し、」までを次のとおり改める。
「第三次答申を提出したが、右答申は、『今や国鉄の経営状況は危機的状況を通り越して破産状況にある。』、『国鉄の膨大な赤字はいずれ国民の負担となることから、国鉄経営の健全化を図ることは、今日国家的急務である。』と指摘し、現行経営改善計画以上の大幅な経費節減措置を緊急措置として講ずる必要があるとしたうえ、具体的な緊急措置として、<1>新規採用を原則として停止すること、<2>設置投資は、安全確保のための投資を除き原則として停止することを提唱した。」
(一五) 同枚目裏一行目冒頭「を」(19頁1段7行目)を削除し、「閣議決定」の前に「として、<1>職員の新規採用を原則的に停止する等の措置をとることにより極力職員数を縮減すること、<2>設備投資は、安全確保のための投資を除き原則として停止すること等一〇項目を」を加え、同行目「これ」(19頁1段8行目)を「前記答申」と訂正し、同行目「同五八年六月」の次に「効率的な経営形態の確立とその前提となる長期債務等の問題を審議するため」を加え、同二行目「同八月」(19頁1段10行目)を「同年八月二日」と訂正し、同五行目「総経費を削減すべき」(19頁1段13~14行目)とあるのを「総経費については、工事規模の圧縮に対応して縮減を図るべき」と訂正する。
(一六) 同枚目裏八行目「たが、」(19頁1段18行目)の次に「前述のように設備投資の圧縮ないし原則停止の方針に従い、」を加える。
(一七) 同二七枚目表一行目「五七年度にかけては」(19頁1段23~24行目)の次に「福地山線電化関係及び大阪駅ビル新築等の工事があったため、」を、同行目「であったが、」の次に「新規工事が抑制されたため」を、それぞれ加える。
(一八) 同枚目表五行目「同五九年二月」(19頁1段29行目)から同裏三行目末尾(19頁2段11行目)までを「国鉄では、昭和五四年以来合理化政策を推進するとともに、前記昭和五六年の経営改善計画による要員縮減計画を順調に実行してきたが、業務量が当初の予想よりも減少したことにより、昭和五八年度当初において前年度から持ち越した約三〇〇〇人の余剰人員(現在職員数が業務に必要とされる所用員数を上回る員数)があり、同年度末には特別退職者が予想を下回ったこともあってこれを含めて累計二万四五〇〇人の余剰人員が生じた。」と改め、同裏七行目「の減少した」とあるのを「が減少したにもかかわらず、」と訂正する。
(一九) 同枚目裏九行目「工事局は、同五八年」(19頁2段19行目)とあるのを「国鉄は、同五八年度予算の作成に当たり」と、同一〇行目から一一行目にかけ「雇用していた臨時雇用員(事務補助職)」(19頁2段21~22行目)とあるのを「臨時雇用員として雇用していた事務補助職」と訂正する。
(二〇) 同二八枚目表一行目「臨時雇用員」(19頁2段22行目)を「事務補助職」と訂正し、同二行目「ととし、」(19頁2段25行目)の次に「同年一〇月以降」を加え、同四行目「対応しきれず、」(19頁2段28行目)の次に「また、工事費の削減は単に一過性のものではないため」を加え、同五行目「判断して、」(19頁2段30行目)の次に「かつ、工事量の減少のため仕事に余裕が生じた職員において事務補助職の担当業務を行わせることができるものと判断して、」を加え、同行目「臨時雇用員制度」(19頁2段30行目)を「事務補助職制度」と訂正し、同七行目「五九人」(19頁3段1行目)の次に「(女性一般事務職全員四九名、男性守衛全員六名、女性雑役全員四名)」を加え、同行目末尾(19頁3段2行目)の次に「同工事局は、その後の退職者七名を除く五二名についてこれを実行した後、翌年九月三〇日には自動車運転手、寮監、寮母等残る臨時雇用員二三名全員を雇止めにした。」を加え、同一〇行目末尾(19頁3段6行目)の次に「しかし、同係の業務に格別の支障は生じなかった。」を加える。
(二一) 同枚目裏末行目「国鉄は」(19頁3段23行目)から同二九枚目表七行目「ことからすれば、」(19頁4段3行目)までを次のとおり改め、同八行目「臨時雇用員制度」(19頁4段4行目)を「事務補助職制度」と訂正する。
「国鉄の財政は、昭和五七年度末において八兆九〇〇〇億円を超える累積欠損を抱えさらに累増傾向にあり、国鉄は、民間企業であれば倒産必至の状況にあるといえる極めて深刻な経営危機に直面したこと、このような国鉄の赤字はいずれ国民の負担となるところから、赤字を解消し国鉄経営の健全化を図ることは国民経済にとって緊急の課題であったこと、国鉄は、その経営を改善するため昭和五六年の経営改善計画に基づき、経費節減のため、業務運営の合理化、設備投資の抑制、要員の縮減に努め、さらに、前記臨時行政調査会の第三次答申、その直後の政府の閣議決定を受けて、昭和五八年度に入り、新規採用、設備投資の原則停止の方策を実行に移し、大幅な設備投資(工事費)の抑制が行われたこと、一方、業務量の減少により昭和五八年度当初において国鉄全体で約三〇〇〇人の余剰人員が生じたが、大阪工事局においても同年度予算において工事費が大幅に削減されたため、同年度当初において余剰要員・人件費の削減を強く要請され、これを避けることができないと考えられる事態に置かれていたこと、以上のような本件雇止め当時に存した客観的状況に照らせば、」
(二二) 同二九枚目裏末行目「ことに始まり、」(19頁4段26行目)の次に「昭和六〇年七月」を加え、同三〇枚目表二行目「のであって、」(19頁4段28~29行目)の次に「本件雇止めが国鉄当局において決定された当時及び本件雇止め当時は、国鉄における職員の削減は、新規採用の原則停止・退職者不補充による自然減によって達成すべきものとされていたのであり、」を加え、同三行目「主張する。」(19頁4段30行目)の次に「本件雇止めの必要性の有無は、本件雇止め当時に存した客観的事情に照らして判断すべきものと解されるところ、前記認定事実によれば、」を加え、同五行目「るが、」(20頁1段2行目)から同一〇行目「ことからすれば、」(20頁1段10行目)までを「り、本件雇止め当時、国鉄における職員の削減は、新規採用の原則停止・退職者不補充による方針のもとに行われており、昭和五六年の国鉄の経営改善計画に基づく要員縮減計画が順調に実行されていたことが認められるが、一方、当時すでに国鉄全体で余剰人員が生じ、また、工事費の削減に伴う人件費の削減が強く要請され、大阪工事局においても同様であった等前記認定の事実に照らせば、」と改める。
(二三) 同三二枚目裏九行目「こと」(20頁3段20行目)の次に「、及び前記三1の認定事実」を加え、同八行目(20頁3段19行目)、一〇行目(20頁3段22行目)及び同三三枚目表一行目(20頁3段26行目)にそれぞれ「臨時雇用員」とあるのをそれぞれ「臨時雇用員たる一般事務補助職」と訂正する。
(二四) 同三三枚目表五行目及び八行目「臨時雇用員」(20頁4段2行目)を「一般事務補助職」と訂正し、同八行目「また、」(20頁4段7行目)の次に「前記三1の認定事実及び原審証人外井の証言によれば、」を加え、同九行目「余地もなく、」(20頁4段9行目)から同一〇行目「あるから、」(20頁4段10行目)までを「ことも不可能であり、また、大阪工事局において事務補助職の制度を廃止して事務補助職全員を雇止めにする方針である以上、事前に有利な条件を示して希望退職者を募ることは適切な措置ではなかったことが認められるから、」と改める。
(二五) 同枚目裏一行目「なかったことも、」(20頁4段13行目)の次に「国鉄が前期認定のとおり控訴人に対し再就職の斡旋をした事実を考慮すれば、」を加える。
(二六) 同枚目裏五行目冒頭(20頁4段19行目)の前に「前掲甲第五六号証、第五七号証の一ないし八」を、同行目「第三七号証、(20頁4段19行目の(証拠略))の次に「第四五号証、」を、同行目「証人浜崎の証言」(20頁4段19行目の(証拠略))の次に「及び原審における控訴人の供述」を、同一一行目「きたこと、」(20頁4段27行目)の次に「国鉄労働組合は、国鉄当局に対し長年にわたり臨時雇用員の職員化の要求を続け、昭和四一年一二月一七日には組合と当局との間に、<1>臨時雇用員が職員採用試験の受験を希望するときは、受験の機会を与えるようにする、<2>臨時雇用員は、一定の必要ある場合以外は段階的に解消する旨の了解事項が成立したが、女性事務補助職の職員化は、遂に実現しなかったこと、」を、それぞれ加え、同一一行目「大阪工事局」(20頁4段28行目)から同三四枚目表一行目「女性であったこと、」までを削除する。
(二七) 同三四枚目表五行目冒頭「員」(21頁1段5行目)の次に「(一般事務職四九名、守衛六名、雑役四名、計五九名)」を加え、同六行目「措置をとったのは、」(21頁1段6行目)の次に「右退職者を除く」を、同一〇行目冒頭「と」(21頁1段12行目)の次に「及び女子補助職の職員化を実現させなかったこと」を加える。
(二八) 同枚目裏二行目「臨時雇用員」(21頁1段17行目)を「一般事務補助職」と訂正する。
(二九) 同三六枚目裏一行目「前記認定」(21頁3段15行目)から同三行目「差異があり、」までを「成立に争いがない甲第八六号証によれば、昭和四六年三月二日国鉄当局と国労との間に職員の雇用の安定等をはかるため、右の協定が成立したことを認めることができるが、控訴人ら臨時雇用員が旧日鉄法上の職員とはいえないことは後記のとおりであり、また『免職」、『降職』等協約の文言に照らしても、」と訂正する。
(三〇) 同六行目「臨時雇用員」(21頁3段19行目)の次に「である控訴人」を加える。
2 当審における控訴人の主張に対する判断
(一) 本件雇止めが旧日鉄法二九条に違反するとの主張について
本件契約は、前述のとおり、二か月の期間を定めた雇用契約であるから、控訴人は、旧日鉄法二六条に照らし、本件雇止め以前においても同法にいう国鉄の職員であったとはいえないから、同法二九条の適用を受けるものではないといわなければならない。仮に控訴人が旧公労法の適用を受ける職員であるとしても、旧日鉄法二九条が旧公労法による争議行為禁止等の制限を受ける代償措置として定められたものと解することはできないから、旧公労法上の職員であるからといって、直ちに旧日鉄法二九条の適用を受ける職員であると解することはできない。したがって、本件雇止めが旧日鉄法二九条に違反し無効である旨の控訴人の主張は、その前提を欠き採用することができない。
(二) 本件雇止めが性による差別であるとする主張のあたらないことは、前述のとおりである。
(三) 本件雇止めが解雇権の濫用であるとする主張について
控訴人の解雇権濫用の主張の一つは、控訴人ら女性は、国鉄が労働基準法、旧日鉄法等の適用を潜脱する目的で女性を臨時雇用員としてしか採用せず正規職員になる途を閉ざされていたため、やむを得ず臨時雇用員として採用され、正規職員よりも劣悪な労働条件のもとで正規職員と同等の仕事をしていたにもかかわらず、臨時雇用員である女性事務補助職を職員に先立ち期間満了として雇止めすることは、解雇権の濫用であると主張するものと解されるが、本件雇止め当時の事情に照らし、臨時雇用員である女性事務補助職を職員に先立ち雇止めすることが合理性に欠けるものといえないことは、前記認定、判断のとおりであり、これによれば右控訴人の解雇権濫用の主張も採用することができない。また、控訴人は、国鉄が控訴人に対し正当な退職金を支払わなかったこと、控訴人の子の出産に際し控訴人を不当に退職扱いにしたこと等の取扱い上の差別を理由に解雇の局面においてさらに差別することは解雇権の濫用であると主張するが、右のような事実は本件雇止め事由と直接関係するものではなく解雇権濫用の事由となるものでもないので、控訴人の右の主張も採用できない。
二 してみれば、控訴人の本訴各請求は、いずれも失当であり、これを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用について民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 吉田秀文 裁判官 鏑木重明 裁判官黒田直行は転勤につき署名捺印することができない。裁判長裁判官 吉田秀文)